「そんなこともあったな…」
腕の中で、ジュリアスが婉然と微笑む。
「急に姿が見えなくなって…探していたら
大きなサラブレッドを引き連れて帰ってきたのだから驚いたぞ」
くすくすと笑うのにあわせて、私の鼻先で金色の髪が揺れる。
視界いっぱいに恋人の金の髪が拡がり、唐突に幸せがこみ上がる。
既に充分愛を交わしあったあとだが、
我慢しきれずに口付けを落とす。
啄むように触れては離れ、青く潤んだ瞳を覗いては
また口付けに没頭する。
ひとつ、ふたつ…
愛とは知らずに求めていた幼い頃の
伝えるすべさえ知らなかったあの熱い想いを
溜め息とともにジュリアスへと注ぎ込む。
「……クラヴィス」
我を忘れかけた私の耳元でジュリアスが囁く。
「一年に一度…誕生日が来るというのも良いものだな。
毎年…そなたは私のためにプレゼントを用意したり
祝いの言葉をかけてくれる…。
そのたびに、私はそなたに特別に愛されているという…
そんな気になれるのだ…」
「気のせいではないぞ」
私はジュリアスを愛している。
誰よりも。
けれど誕生日の夜は、二人で紡いできた思い出が
何故だか私をメランコリックな気持ちにさせて
初めてジュリアスを恋した時の胸の高鳴りを思い出させるのだ。
誕生日おめでとうジュリアス。
最後まで読んでくれてありがとうございます！
by 仁美
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