「ちょ〜っと待った、お嬢ちゃん！」
と慌てた声が聞こえてきたよ。
でも僕達ふたりとも男だから気にせず歩いていたら
馬に乗った赤毛の男の人が、まわりこんできて
僕達の前をとうせんぼしたんだ。
（なんだかこの人の子孫には、いつかどこかで出会うような予感がするぞぉ〜）
「そこの竪琴を抱えたお嬢ちゃん…」
「…わたくしは男ですよ」
「なにっ？ 男？」
目を見開いて驚いている。
僕もペッタンコの胸を見るまでは、女の人かと思ったけどね。
「まぁいい…。この美しさの前には男も女もない…」
赤毛の男の人は呟いてるよ。
「それにしても…せっかく着替えを隠したのに、
戻ってみたらこんなチビと一緒に…」
むむむ。なんだか危ない呟きだなぁ。
この人が服を隠した犯人なの？
「少年よ。この麗人を俺に譲ってくれないか？」
え〜。
それじゃあ人身売買だよ。
それにこの人はちょっと悪い人だ。
「嫌」と答えようとしたのに、それより先に青い髪の人が
「いいですよ…。あなたについていきましょう」
なんて答えちゃったんだ。
心配そうな僕に青い髪の人はそっと囁いてくれた。
「だいじょうぶですよ。
この人には、ちょっとお灸をすえる必要があるみたいですしね。
それに…何故か運命を感じるのです…」
なあんだ。弱々しく見えたけれど、この青い髪の人は強そうだ。
安心安心。
「そのかわり…この少年に、わたくしに代わる品物を与えてください」
「ふむ…じゃあこの手袋はどうだ？」
すかさず青い髪の人が
「わたくしはそれだけの価値なんですか？」と睨み付ける。
二人が言い合うのを目を丸くして見てるうちに、
最後には…。
「子馬の頃から育てた極上の愛馬なんだが…」
すっごく悔しそうな赤毛の男の人だけれど、
青い髪の人の有無を言わさぬ微笑みに観念したように
僕に手綱を渡してくれた。
うわぁぁ〜っ！
馬！
馬をもらえちゃったよ！？
ジュリアスが欲しがっていた馬だよ！？